きみの血はぼくと同じ赤い色をしていました


ゴホゴホ。ゴホッ。

数週間前から、極卒は咳をしていた。
何度も何度も大丈夫か。と聞いたが、何度も何度も大丈夫です。と笑って答えた。
その笑顔は、何だか直ぐに壊れてしまいそうな笑顔だった。
もう直ぐ…離れていってしまいそうだった。


ゴホゴホ。ゴホゴホ。

一向に咳は止まらなかった。むしろ悪化していた。
それでも、極卒は笑顔を絶やさなかった。私に心配をかけまいと、極卒はいつも笑っていた。

―大丈夫ですよこんなの。
ただの風邪ですから。
きっと長引いているのですよ。―

そう、いつも言っていた。
だから、私も大丈夫なのだと、信じていた。
極卒本人がそう言っているのなら…大丈夫。平気なのだと。


ずっとそう信じていられれば良かったのに


神様はどうして残酷なんでしょうかね


どうしてなんでしょうか兄様?


ふと、昔極卒が私に問いかけた言葉を思い出した。
何故だかは…まだ解らなかった。












それは、とても暖かく、穏やかな日に突然来た。







































極卒が、死んだ。












































口から、真っ赤な血を流して、流して、流して。死んだ。
呆気なく、死んでしまった。
とりあえず、私は極卒の亡骸を抱きしめて、泣き叫んだ。

病名は、「結核」だった。現代の医療では治せない、不治の病だった。




極卒の死から数週間。
私は、コホコホと咳込んでいた。
その様子を見て、線香を焚きに来たヴィルヘルムが心配そうに言った。


「國卒、大丈夫か?」

「なんてことはない。ただの風邪だろう。」

「だといいが…もう何週間も尚治っていないだろう?もし、極卒と同じ結核だったのなら…」

「それはそれで本望だ。極卒と同じ病で逝けるのなら…これ以上の喜びは無いさ。」

「そうか…まあ、そうだとしても、お前はそう簡単にくたばりそうに無いな。いつまでもしぶとく生きていそうだ。」

「400歳超えてる老人に言われたく無い。」


それから、すぐにヴィルヘルムは帰った。ジャックに呼ばれているらしい。
一人になると、色々と思い出してしまう。
極卒と共に暮らしていたこの家。
極卒と共に取った食事。
極卒と…。


「ケフッ。」


パタタ…。

咳と共に何か鉄臭いものが出た。
何かなど、考えなくてもすぐに解る。
これで極卒は死んだのだから。


「やはり…僕も感染していたのか。」


心は意外にも穏やかだった。
いや、寧ろ喜んでいた。
これで、本当に極卒と同じ病で極卒の元に逝けるのだから。


「これはこれでいい結末…か?極卒。」







僕もそろそろそっちに行けそうだよ。








THE END




数日後に國卒は亡くなりました。



詳しい事はほっといて。


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