拝啓 金色の狐様

お久しぶりです。此方はもう秋なのだなっと感じさせられるくらいの寒さです。
其方はどうでしょうか?まだ多少は暖かいですか?

長い間手紙を書かないですいませんでした。
僕も兄様も忙しく、書く時間がなかったのです。
皆、元気でしょうか?僕も兄様も元気ですよ。
もう、東京に出てから何年経ったでしょうか。時折、皆の事を思い出しては涙ぐんでいます。
そして、兄様が何事かと慌てるんです。涙ぐむくらいで、慌てないで欲しいですよ。全く…。

そういえば、少し前に僕と兄様は昇格したんですよ。
兄様は中佐から大佐に。僕は少佐から中佐に。
でも、兄様は昇格した途端、同じ大佐に喧嘩を売ってしまったんですよ。兄様の代わりに僕が元帥に怒られました。
勘弁して欲しいです。また不眠症になりそうで…胃もキリキリと…いたたたた…。
喧嘩の勝敗は、兄様の圧勝でした。

こっちは物価がとても高くて困ってます。
最近、近所のおばちゃん達に勝てる様になったんですよ。今までは特売品とか、買えなくて大変だったんですから!
それを兄様に話したら、兄様は「ごめんな極卒…」と僕の肩を掴みながら泣いてしまったんです。
そんなに悲しいですかね?僕は嬉しいんですが…?
こっちでも、そっちくらい安ければなーっと常に考えてしまいますよ。
嫌な癖ですよ本当に…ふう。


そうだお狐様、ロマンスとなのこに言っといてくださいよ。 泊まりに来るのは大歓迎なんですが、兄様が物凄く嫌な顔をするんだと。
いいじゃないですかね。泊まりに来るくらい。
それなのに、兄様ったら呪われるんじゃないかと思うくらい、じーっと柱の影から僕を見てくるんです。
なんだ。そんなの。とか、簡単に考えたら駄目ですよお狐様。
夕方、夕飯を作っている所を想像してください。丁度、後ろには出入り口があるんです。
その出入り口の影から兄様が恨みがましい顔で睨んでいるのを考えてください。
物凄く見てるんですよ。じーっと何かを訴えているかの様に。貞子もドッキリ☆ですよ。
その時の兄様、物凄く暗いんですよね。何かこう…幽霊を後ろに背負っているみたいに。背後霊が本当に居そうで怖いですよ。
一度見せてみたいですね。そうすれば、どれだけ怖いか解りますから!
じーっと無言で背後や柱の影に居られたら、いくら僕でも出て行きたくなりますよ。

あっだからこの間家出してきました。

もうあんな兄様見てるのが嫌で思わず。
友達のウーノの家に行ったら快く泊めてくれました。
あーあ。兄様もウーノくらい素直だったら良かったのに。
……今のやっぱり無しにしてください。素直な兄様…予想外に気持ち悪かった…。
兄様はアレでいいです。過保護?を止めてくれれば。
僕だってもう大人なのに…。
そういう訳なので、お盆くらいに帰りますね。それまで待っててと言っておいてくださいね。
でないとロマンスはともかく、なのこは五月蝿いですから。
その内兄様丸め込んで泊めれる様にしますから。

折角なので、兄様でもう一つ。これはもう救いようがないですよ。
兄様の運動神経が優れている事は知ってますよね?学校の成績も良かったですよね?オール5でしたよね?
僕殆ど3だったけど…。
あの成績、絶対嘘ですよ。可笑しいですもん。
この前、どうしても仕事が終わらなかったので、先に帰っていた兄様にご飯作っといてって電話で言ったんですよ。
したら5分後くらいに「ご飯の炊き方が解らない」って電話が着たんですよ。
…あれ?兄様、学校で何習ったんですか?
仕方ないから教えましたよ。
するとまた。今度は「おかずの作り方が解らん」って。
おかずなんか目玉焼きでいいですからって言ったんですよ。したら何て言ったと思います?
「目玉焼き?そんな危ないもの食わせられるか!」って。
危ないって何ですか危ないって。いつも朝食べてるじゃないですか。
どうしても目玉焼きは嫌だって言うんで仕方なく野菜炒めにしたんです。僕は何でもよかったんですが。
電話でレシピを言っていたら、塩コショウと砂糖を間違えたらしいんですよ。
まあ、それくらいはいいかなっとか思ったのが間違いだったんですよ。
その時は何も知らないで家に帰ったんです。もうお腹ペコペコで。
したら…最大の敵が待ち構えてましたよ。

テーブルの上の…皿の上でボスンボスン音を立てる物体X…それとご飯?にお味噌汁(だったもの)…。

僕、思わず言ったんです。「兄様…これ何ですか?」って。
したら兄様が本当に申し訳なさそうに「……やっ野菜…炒め?と…ご飯…に汁…」と。
その時の兄様は眼を合わせてくれませんでした。
塩コショウと砂糖を間違えただけで何で物体Xが出来るんですか?
兄様、成績5でしょう?
それを言ったら…「家庭科と…音楽は…その…何というか……だったぞ…一年だけ」
どうやら、その一年に大切な事を学びそこなった様です。
仕方ないから食べましたよ。ええ食べましたとも!!
兄様が頑張って作ってくれたんですから食べましたよ。

そして後悔しましたよ。

何て表現したらいいんでしょうね。アレは地球外生命体でもイチコロですよ。核兵器なんか目じゃないですよ。
核より殺傷力あると思いますよ?口に含めば。
箸が溶けました。仕方ないからフォークで食べました。
口に入れた瞬間、身体の防衛本能が働いて発熱しました。次に頭痛が来ました。暫くのた打ち回ると、今度は果てしない腹痛でした。
痛くて痛くて呼吸困難になり、更に心肺停止したんです。
直ぐに救急車を呼んで何とか一命を取り留めました。
ああ。僕はそんな症状だっただけで、もっと酷い人も居ましたよ?
何も知らないで来てしまった数人の友人が全員ポックリ逝きそうになりましたからね。
勿論症状は個人で違いますよ?
恐ろしいですよね。それからはもう作らせてませんよ。死にたくないですから!


さて、今回はこのくらいにしておきますか。兄様の伝説?はまだまだありますから、聴きたかったらいつでもどうぞ?
とことん話してあげますよ。
ではまた。返事、楽しみにしてます。



極卒















ててててて…。

「お狐様ーお兄ちゃんから手紙来たー?」

「ああなのこか。丁度読み終わった所だよ。極卒は大変そうだよ。」

「泊まりに行けそう?」

「少し難しいみたいだよ。詳しくは書いてあるからお読み。」

「うん。ありがとうお狐様。」

ててててて…。

「さてさて…向こうも大変だねぇ…」


リンリーン…リーン…


「もう秋か…早いものだ。」





チリーン…








THE END


兄様…ご飯の炊き方くらい解ろうよ。
無駄に文ばっかり…読みにくくてすいません。
これはほのぼの?ギャグ?うーん…。
とにかく、ここまで読んでくださりありがとうございました。
至極の感謝。




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