願いをひとつ告げよう どうか共に心中してはくれないか?


いつも隣に居てくれた。私はそれがとても嬉しかった。
そして、同時に不安だった。
何時、お前は私の隣から居なくなってしまうのだろう。
何時、私を見捨てていってしまうのだろう。
嬉しくて、嬉しすぎて。逆に不安だった。
どうすれば、お前とずっと一緒に居れるだろうか。
考えて考えて考えて。
これしか思いつくことが出来なかった私を許して欲しい。


「極卒。」

唐突に、私は正面のソファーに座って本を読んでいた極卒を呼んだ。

「何ですかヴィルヘルム?」

名前を呼べば、必ず私を見てくれるお前が好きだ。

「愛しているよ。」

「何を今更…僕も愛していますよヴィルヘルム。」

愛していると言えば、必ず愛していると返してくれるお前が好きだ。

「お前は…何時私の隣から居なくなってしまうのだろう…」

そう呟くと、極卒は悲しい顔をした。
そんなに悲しい顔をしないでおくれ。お前にそんな顔は似合わないから。

「どうして、そんな事を言うんですか?」

「いつも不安だったんだよ。何時、お前が私の隣から居なくなってしまうのか。
何時…私を見捨ててしまうのか。不安だった。」

「そんな…事…」

しませんよ。と、極卒は笑って私に言ってくれた。その笑顔が、大好きだ。

「それでな…私なりに考えたのだよ。どうすれば、お前が私の隣から居なくならないか。
…いくら考えても、これしか思いつかなかった。」

「僕に出来る事なら、何でも言って下さい。何でもしますよ。」

極卒は、真剣に私を見てくれた。その大きな瞳が、好きだ。

「…ひとつ願いを告げてもいいだろうか?」

「どんなでしょうか?」

「私と共に、心中してはくれないか?」

じっと極卒を見る。極卒は目を見開き、驚いていた。
…当たり前だろう。いきなり、心中してくれと言われれば、誰だって驚くだろう。
ごめんな極卒。拒否して構わないのだよ。私の勝手すぎる願いなのだから。

「…いいですよ。いいですね。心中。しましょうよ。」

「いいのか?」

極卒は拒否しなかった。笑って、心中しよう。と言ってくれた。

「言ったじゃないですか。何でもしますって。心中くらいお安い御用ですよ。」

「極卒…」

「ヴィルヘルムとなら、何処へ逝っても怖くありません。一緒ですから。」

だから、しましょう。と私の手を握ってくれた。
ごめんな極卒。私は弱いから、逃げる事しか出来ないんだ。

「ごめんな極卒…」

「何で謝るんですか。謝らないで下さいよ。二人なら、怖くないでしょう?」

嗚呼。お前は強いな極卒。
私より、遥かに強く、優しいな。

「ありがとう…。ありがとう極卒。」

極卒が握っている手を強く握り返す。
お前の心地よい温かさが…大好きだ。
私は思わず、涙を流した。

「泣かないでくださいよヴィルヘルム。僕が良いと言ったんだから良いのですよ。」

「…そうだな。私ばかり泣いていても仕方が無かったな。」

「何時しましょうか。いっその事、今すぐしましょう。」

「そうだな。」

それから、私達は深く深く、覚める事の無い眠りについた。
城にあった、大量の睡眠薬を必要以上に服用して。
徐々に沈んでゆく意識の中、私の霞んだ瞳がとらえた景色は、
いつも見ていた、極卒のあの笑顔だった。



暗くて 何も見えない。


極卒…

何処にいる?


私は此処にいる。


極卒。



このまま歩けば、お前に会えるか?


極卒…



 ―ヴィルヘルム― 



嗚呼。其処に居たのか極卒。


やはりお前は眩しいな。


お蔭でこの暗闇でもお前がわかったよ。



私は極卒に向かって手を伸ばした。



極卒は笑って私の手を握ってくれた。







THE END











…初御題で初シリアスでした。…似非シリアス?知るか。
意味不明だよ…
やっぱり恥が邪魔するのね^^;仕方無い。
此処まで読んでくださり、ありがとうございました。
至極の感謝。





帰還