『ミラクル☆4』と偶然にも同じ番組に呼ばれ、偶然にも楽屋が隣になってしまった『Deuil』。
そんな『Deuil』と『ミラクル☆4』の収録本番前…。


「やあ、ユーリ。今日はよろしくね。」

「ああ。こちらこそよろしくウーノ。」


爽やかにウーノに握手を求めるユーリ。だけど、ウーノは…


「いや〜握手は求めてないしね。」


ピタッとユーリの動きが止まった。ウーノは、絶対零度の微笑みで最後の「しね」だけ強調したのだ。


「…え?何か…言った…か?」

「え〜?知らないしね。」


それから収録が始まるまで、ユーリだけでなく『Deuil』全員が『ミラクル☆4』に精神的に追い詰められていた。
そして、収録が始まりステージに行く際に、ウーノがユーリの耳元で警告した。
口元を、怪しげに歪ませて。


「これ以上虐められるの嫌ならさー…もうごっくんに近寄らないでね。」


妙に冷たい声だった。
周りを見れば、アッシュもスマイルもフォースと若さん、ツーストに同じようなことを言われたみたいだった。
ユーリは、今日の収録から逃げたくなった。
極卒を諦める気はさらさら無いが。

そんなユーリを見て、またウーノがニヤリと笑った。








「ペポ」の恐怖








そんなユーリの恐怖体験など端の方に置いておいて。
この事件は発端はヴィルヘルム城で起こった。

ヴィルヘルム城2Fの廊下


「上司ー何処だよー上司ー?」


やる気無くジャックは上司のヴィルヘルムを探していた。
何処の部屋を開けても、ヴィルヘルムは居なかった。
やる気は無いのだが、2,3時間も捜していればイライラも募る。

「…ったく。本当に何処行ったんたよ……あ…此処、上司の部屋か…。上司ー。」


カチャリ。
扉を開けてもヴィルヘルムの姿は無かった。
ジャックは諦めて、また途方も無いくらい長く暗い廊下に出た。そして、肩を落としてトボトボと歩いていった。
そして、廊下の端に着いた時、ジャックのイライラに限界が来てしまった。こんなに捜したのに、何故居ない?!


「あーもうっ!上司!!さっさと出てこないとこの城!灰になるまで燃やし尽くすぞ!!」


最後の手段。ジャックは大声で、何処かに居るヴィルヘルムに聞こえる様に大声で叫んだ。
すると、先ほど覗いたヴィルヘルムの部屋の近くから捜していたヴィルヘルムの返事が聞こえた。


「どうしたージャック?私に用かー?」


やっと、ヴィルヘルムが見つかったので、ジャックは急いで部屋に向かう。


「ああー?何でいきなり自分の部屋に居るんだよテメー!さっき居なかったじゃねーか!!」

「何を言っているジャックー?私はさっきから此処にいたぞ?お前が見たのは向かいのリシェルの部屋じゃないかー?」

「…あ。」


ヴィルヘルムの部屋の前に立ってようやく気が付いた。
さっきジャックがヴィルヘルムの部屋だと思って覗いた部屋は、リシェルの部屋だったのだ。
リシェルの部屋は最近出来たばかりなので、ジャックはまだヴィルヘルムの部屋と間違えるのだった。
ジャックは思いっきり扉を開いて中に入った。


「何だ、普通に居たのかよ…。で、何やってんの?」

「む?見て解らんか。我が家の家宝であるヘルムットを磨いているのだ。」

「家宝?それが?」

「何を言うか!このヘルムットには3000年以上の歴史があるのだぞ!」


ヴィルヘルムは、大事そうにヘルムットを磨きながらジャックを叱る。


「それに、このヘルムットをバカにしたり、侮辱すると恐ろしい呪いがかかるんだぞ。」

「何だそれ。」


ジャックは、呪いなど信じていないと言わんばかりに、ヘルムットを叩いた。


「こっこら!止めんか!!呪いがかかるぞ!!」

「残念だけど上司、俺は呪いとか信じてないんだペポ。」


………ペポ?
ジャックは咄嗟に口を塞いだ。
そんな…バカな。
ジャックは自分を疑った。今まで、「ペポ」などというふざけた口癖は使った事はない。
なら…?
ジャックが驚いていると、ヴィルヘルムがヘルムットを持ちながら当然の様な顔をしてジャックに言った。


「ほぅらジャック。私は警告したんだぞ。ヘルムットの呪いだ。」

「これが…ペポ?」


あああ…とジャックは頭を抱えてしまった。
無意識に語尾に「ペポ」がついてしまうのだ。
そんなやりとりをしていると、外から帰ってきたリシェルが部屋に入ってきた。


「何してるんですか…五月蝿いですよ。」

「おおリシェル。実はな、ジャックがヘルムットの呪いにかかってしまったのだよ。自業自得だな。」

「…そんな呪い、嘘だと思ってましたよ。最近私も、ヴィルヘルムのヘルムットに悪戯してますが…」

「ギュアッ?!」

「なんでリシェルは語尾が普通なんだペポ?!」

「ふふん。貴方と違って日頃の行いが良いからですよ。」


リシェルはジャックを見下す。それがジャックには悔しくて仕方なかった。


「だがリシェル、油断するなよ。この呪いは…。」

「五月蝿いペポ!お前も「ペポ」がつけばいいんだ!!…あれ?」

「そんなのついてたまりますかペポ。………え?」


ジャックの語尾から「ペポ」が消え、リシェルの語尾へ。
これはもしや…と思い、リシェルはヴィルヘルムに確認した。


「呪いが…うつったのですか…ペポ?ヴィルヘルム?」

「う…うむ。この呪いは人にうつるらしい…。無差別にな。」

「な…?!」


それを聞くと、リシェルは床に座り込んでしまい、予想以上に衝撃を受けていた。
その姿を見て、ジャックとヴィルヘルムはリシェルを慰めようとした。
が、リシェルは小さな声でしきりに何かを言っていた。


「リシェル…?」

「大丈夫…ですか?」

「この性で極卒さんに嫌われたらどうしましょうペポ…この性で嫌われて縁を切られたら…ブツブツ」

「リ…リシェル…?」


そして、リシェルは頭を抱えて立ち上がった。


「アアアアアアアアアア!!!!極卒さんに嫌われるのは嫌ペポォォォォォォォォォ!!!!!」


そのまま、リシェルは外に飛び出してしまった。
きっと、極卒の元に行ったのだろう。
ジャックとヴィルヘルムも急いでリシェルの後を追う。
リシェルの絶叫は、少し後から出たジャックたちにも聞こえるくらいの大声であった。



それから2分ほどすると、家にいた極卒は外の異変を感じた。
何やら誰かが大声を発しながらご町内を走っている様だ。
五月蝿くてかなわない。だが、何処かで聞いたことのある声だった。


「一体誰でしょうかねぇ兄様?」

「さぁな〜。僕の知った事じゃないし。極卒、膝枕してくれよ。」

「(無視)何か…此処に近づいてませんか?」

「そうか?(泣)」


先ほどから聞こえる声は、どう考えても我が家に近づいてきている。
というか、この近所に来ているのか。
極卒は、まさか自分の家に来るわけが無いと確信していた。
…が、その確信は一瞬にして音を立てて崩れ去った。


「ペポォォォォォォォォォォ!!!!極卒ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


ガラガラッ!!とものすごい勢いで玄関が開いた。
いきなり誰だ?と思い二人で玄関に恐る恐る行ってみた。
するとそこに、大泣きして顔がクシャクシャになってしまったリシェルが立っていた。
どうしてリシェルが泣きながら我が家に来たのか、極卒は理解できなかった。


「な、ななな…?!」

「リシェル?!貴様よくも二人きりの時間を台無しにしてくれおったな!!」


混乱している極卒の脇を通って、國卒はリシェルに突っかかった。
それでもリシェルは怯まず、グズグズと泣いていた。


「何なんだコイツは…。」

「まっまあ、兎に角話を聞いてみましょうよ。リシェル、どうかしたのですか?」

「グス…実は…。」




一方、ミラ4に虐められていた『Deuil』は、ようやく収録が終わったところであった。
収録中も、見えないところでウーノやら若さんやらにネチネチと虐められていたのだった。


やっと家に帰れる…

今日はもうゆっくり休んでよう…


ユーリは、スマイル、アッシュと共にフラフラと危ない足取りで最寄の駅へ向かい、三人一緒に電車に乗った。
ここでまた、不幸が訪れた。
ユーリ達がが乗った電車は、家とは逆…つまり、反対側のホームの電車に乗ってしまったのだ。
乗ってから、ユーリ達は逆だと気づき、そして、この次の駅で降りれば偶然にも極卒家がある事を思い出したのだ。
不幸の中に、ほんの少しだけ幸せが含まれていた。
それを思い出し、少しだけ元気が出た『Deuil』の2両後ろに、極卒家に行くのが目的の『ミラクル☆4』がウハウハしながら乗っていた…。




まだ次の来客が来るのを知らない極卒と國卒は、リシェルから何があったのか聞いたところだった。


「なるほど…ヘルムットの呪いですか。」

「気味が悪い呪いだな。語尾に「ペポ」とは…。」

「そうペポ…これでは、どこぞの歩くブラックホールです…ペポ。」

「しかも無差別に移るとは…厄介極まりない!」

「自分が言ってると嫌ですけど、他の人が言っていると可愛らしいですね。」


ニコニコと微笑みながら極卒は言う。
そんな極卒を見て、國卒とリシェルは顔を見合わせ、思った。


(お前(貴方)が言っていた方が何万倍も可愛いぞ(です…ペポ)。)


丁度、お互い目線を極卒に戻したところで、再び来客。
リシェルを追って町内を無駄に走り回っていたヴィルヘルムとジャックだった。


「こんにちは〜!極卒〜?」

「此処にリシェルがお邪魔してはいないか?」

「はいはい。今行きますよ〜。」


パタパタと玄関まで走っていく極卒の背中を、國卒とリシェルが良からぬ事を考えながら見ていた。
そんな事など知らず、玄関に走っていった極卒。
久々にヴィルヘルムとジャックの姿を見て、少し安心したようだった。


「久しぶりですねお二人とも。元気そうで何よりです。今、リシェルから話を聞いた所ですよ。」

「そうか。なら話が早い。…だが、良かったよ。お前に呪いが移っていなくて。」

「くうい?」

「あれは本当に怖ぇ呪いだぜ…俺はもう二度とごめんだな。」

「え?ジャックも呪いに…」


かかったのですか?と聞く前に、家中に國卒の悲鳴が響いた。


「ぎょひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

「?!兄様?!」

「まさか…なあ。」

「しかし…上がらせてもらうぞ極卒!」

「えっええ。」


ヴィルヘルムとジャックが上がり、極卒と共に先ほど居た和室に向かうと、何やら深く絶望している二人が居た。
あの短い時間に何があったというのだろうか。極卒は意を決して國卒に聞いてみた。


「兄様…何があったのですか…?」

「……………」

だが、國卒は話そうとしない。普段なら絶対に極卒の問いには答えるのに。


「國卒…。」

「だっ大丈夫か…?今にも死にそうな顔してるぜ…?」

「兄様!何があったのですか?!」


極卒は國卒の肩を揺すって聞いたが、顔を背けるだけで何も言ってはくれなかった。
諦めて肩を放そうとした時、絶望していたもう一人…リシェルが口を開いた。


「…実は、國卒、に、も、呪いが、移って、しま、って…ペポ。」

「「「…え?」」」


三人は口を揃えて言った。

國卒…にも?

もしやと思い、再び問い詰めた。


「兄様。呪いが移ってしまったのですね?そうでしょう?」

「………」


それでも話さない。國卒は更に泣きそうな顔をした。
だが、極卒も諦めなかった。


「それくらいで僕は兄様を嫌いになったりしませんよ?」

「…極卒…ペポ…。」


國卒は、本当に小さな声で極卒の名を口にした。
その語尾には、確かに「ぺポ」が付いていた。


「僕は…僕はもう終わりペポ。こっこんな…ああ…恥だペポ。死ぬペポ…。」

「諦めてはいかんぞ國卒!」

「そうだぜ!俺だって付いてたけどさ、リシェルに移って治ったぜ?だから直ぐに誰かに移って治るって!!」

「兄様元気出してください!」

「そうです!私だっていますから!!……あれ?治…った?」


その場に居た全員がリシェルを見る。
リシェルの語尾に「ペポ」が付いていない。つまりは、誰かに移ったと言う事だ。


「リシェル貴様…僕より先に治るとは…!!………ん?」

「やったぜ!治ったじゃん!」


なんと、國卒の語尾からも「ペポ」が消えたのだ。
これも誰かに移ったと言う事なのか…。
ジャックは今話したが、語尾に何も付いていなかった。
…ということは。
皆、一斉にヴィルヘルムを見た。


「……ギュア?!わっ私な訳ないだろう!これはヘルムットを侮辱した者への呪いなのだから!」

「じゃあ何だ。この可愛い極卒に移ったと言いたいのか、このカニパン風情が!!」

「認めたくないが、それしか無いだろう!!」

「何だとこのヘボ上司!」

「呪いが消えた…とかは?」


國卒とジャックはリシェルの考えを聞き、それだ!と大声を出しながら指を刺した。


「そうだよ!きっと消えたんだよ!な!」

「うむ。極卒に移るなどあり得ん事だ。」

「そうでありたいものですね。で、どうしたんです極卒さん?先ほどから黙っていますが。」


ふとリシェルが、先ほどから極卒の発言が無いことに気づく。
極卒自身は、キョトンと四人を見ているだけだったのだが。


「ペポペペポペポ。ポヨヨヨ、ポヨ。ペポペポ。ポヨ。」


極卒は、ハッとして口を押さえた。
今、自分は何と言っていたのだろうか。
ペポ…ポヨヨ?何なのだ、コレは!


「ごごご極卒…?お前……」

「嘘だろう…?」

「まさか…そんな…。」


三人は絶望した。最早語尾どころの問題ではない。
言葉が…「ペポ」になってしまっている。


「ふざけているのでは、無いよな。」

「ペポペポォペッポ!!ペポペポ!」

「訳わかんねぇよ…。」


どうやら本人は「何でこんな時に!しません!」と言いたい様だ。
そこで、ヴィルヘルムが何かを思い出した。


「そうだ。確かこの呪いは進化するのだ。語尾から言葉へ。そして、それから徐々に…。」


そこで、言葉を止めてしまった。
この呪いは、他にどうなるというのだろうか。
リシェルは聞いた。


「どうなるのです?極卒さんを思うのなら、話してくださいヴィルヘルム。」

「う、うむ。それから徐々に身体が…あの…歩くブラックホールの様になるのだと、我が家に代々伝わる本に記されていた。
そしてな…この呪いの解き方が記されていなかったのだよ。どうしたものか…。」

「何だと?!」

「ペポォォ…。」


そんな…。と極卒は肩を落とした。
極卒が歩くブラックホールになるなんて。考えたくない。
三人はどうすれば解けるのか、頭を抱えて考えていた。


すると、再び来客が。
今度は少し人数が多い様で、玄関の方が少し騒がしかった。


「「「こーんにーちーはー!!」」」

「ごっくん!!遊びに来たよ〜!」


元気がとてつもなく良い『ミラクル☆4』と…


「うっそだぁ…」

「最悪…」

「何で運が無いンスかねぇ…。」


果てしなく元気が無くなっていた『Deuil』だった。


「わんさかとこの忙しい時に来たな…!」

「こいつらほっておいて、極卒をどうするか考えようぜ。」

「あ、私それに賛成です。」

「ペポ…」

「ううむ。どうしたものか…。」


全員一致?で来客を無視しようとしたところ、ミラ4の皆さんが不法侵入してドカドカと上がりこんでしまいました。
その場の雰囲気で『Deuil』も。


「ごっく〜ん!実は凄く美味しいお饅頭を持ってきたんだよ〜!食べて食べて!」

「ウーノ!今はそれどころj「ペポ?!ペッポォォォォォォ!!!!!」

「ぇえ?!」


國卒がウーノに説明しようとした時、お饅頭の単語を聞いてしまった極卒がウーノに感極まって体当たりしてしまった。
ペポペポ言っている極卒に、ミラ4もDeuilの皆さんも驚いていた。


「え…?これどういうこと?すっごく可愛いけどさ。持って帰っていい?」

「説明すれば長くなるんだ…。持ち帰って良いわけあるか!」


それから3時間ほど、ウーノ達合わせて7名は大人しく今まであったことを聞いていた。
その間、ユーリがウーノに足を抓られていたのは、本人達しか知らない事だった。


「なるほど…面倒な呪いだね。カニパンも持ち主に似るのかな?」

「なっ私も面倒だというのか?!」

「そう言ってるの解らない?頭の中もカニパン並か…スカスカだね!」

「ギュアアアア!笑顔で言うなウーノ!!」


ウーノは、ヴィルヘルムを見ながら思いっきり卑屈な笑いを浮かべた。
そうこうしている内にも、極卒の呪いはどんどん進行してゆく。
早く何とかしないと、歩くブラックホールになってしまう。


「手っ取りばやく、誰かに移してしまえ極卒。ほら、そこの犬はどうだ?」

「え?!オオ俺ッスか?!」

「貴様以外に犬がいるか?」

「ペポ!ペポポペポ…してくださいよ!!おや?声が!」

「やったー!呪いが移動したみたいだね!」


万歳万歳と極卒を胴上げするが、その中に「万歳」ではなく「ペポ」という言葉が微妙に混じっていた。
一同は胴上げし終わると、一斉にその方向を向いた。
そこには、ユーリがいた。本人はまだ気づいていないようだった。


「ペッポィ?ペペポポペポポペペ。ペポ!」

「ユーリ!言葉が!…って髪がショッキングピンクになってるッスよー!!」

「ぺポ?……ペッポォォォォォォ?!?!?!?!」


アッシュに言われて自分の髪を見て驚くユーリ。驚くくらいに輝かしい蛍光ピンクになってしまった髪に絶叫した。
ウーノと國卒は腹を抱えて笑い、極卒はさっきまで自分がなっていたので、他人事とは思えずおろおろしていた。


「アッハ…アッハッハッハッハッハ!!!バカみたいだねユーリィィィ!!!」

「プフー!お前似合っているぞ!一生それでいいんじゃないか?!」

「ペポォォォォォォォォォオォオオオオ!!!!」


ユーリは、目に涙を浮かべてポカポカと國卒を叩いたが、全然気にしていないようだった。
諦めてスマイルとアッシュ、少し不本意ではあるがミラクル☆4の三人に助けを求めて二人を見たが、五人も声を抑えて笑っていた。
それを見て、少し悲しくなったユーリの肩を極卒が優しく叩いた。

「大丈夫ですよユーリ。一緒に治し方を考えましょう!」

「うむ。私達も付いているぞ。」

「元は俺らの性だしな〜…」

「私達が原因なら…責任を持って呪いを解く方法を考えないと。」


極卒の他に、ヴィルヘルム、ジャック、リデルが手を差し伸べてくれた。
その時のユーリには、その四人が神の様に輝いて見えていたという。


「さて、困りましたね…。どうしましょうか。」

「ペポ…。」

「そうだ。マジカルバナナでもやりながら考えようぜ。連想ゲームだから何か出てくるかも。」

「ジャック、名案ですね。では私からヴィルヘルム、極卒、ユーリ…ジャックの順番で。マジカル呪い。呪いといったら祟り。」

「祟りといったら…お払いか。」

「お払いといったら…生贄でしょうか。」

「ペポぺ…(パスで…)。」

「俺か。生贄といったら…吸血鬼?」

「?!」

「吸血鬼といったらユーリですよねぇ〜…」


じぃっと、三人はユーリを見つめ、じりじりとにじり寄ってきた。


「ペポ…?!ペポペポ!!」

「こっこら!何をしているのですか!ユーリを生贄だなんて許しませんよ?!」


極卒がユーリの前に立ち、必死に止めようとするが、三人は不適な笑みを浮かべながらじりじり寄ってくる。


「でも、これは極卒の為なんだからさ〜わかってくれよ。」

「そうだ。あそこで笑い転げている奴らに代わって私達が!」

「この呪いを終わらせる為なんですよ〜わかってください極卒さん。」

「駄目です!絶対に!」


じりじりと寄ってくる度に後ずさりをするが、とうとう壁に追い込まれてしまった。
ユーリも極卒もガタガタ震えている。
そして、いつの間にか笑っていた國卒たちも合流していた。


「さあ極卒。そいつを渡せ。」

「ユーリ〜君が犠牲になれば済む話なんだよ?」

「さあ!極卒さんも諦めてユーリを渡すのです!」

「さあ」

「さあ」

「さあ!」


ぬう…っと手が伸びてきて、ユーリの手を、



「つーかまーえたー」



にいっと。ウーノが。笑った…。












































「うわぁぁああああぁあぁあぁあぁ?!?!?!?!?」










ガバッと勢いよく布団から起きるユーリ。身体がカタカタ震え、全身汗でぐっしょりだった。
落ち着いて息を整え、辺りを見回す。
此処は、見覚えがある。極卒の家の一室だ。
ユーリはほっと胸を撫で下ろす。
そう。全ては悪い夢だったのだと…。

そう思っていると、静かに襖が開いて極卒が現れた。
手にはお盆を持っていた。どうやらお粥を作ってきたらしい。


「起きましたかユーリ。気分はどうです?」

「大丈夫だ。ちょっと…怖い夢を見ていたくらいで。」

「そうですか。」


そう言って、極卒はお盆を置いて部屋から出ようとした。
襖を閉める前に、一言ユーリに問いかけて。











「夢の続き、覚えてますか?」











恐ろしかったですね。忘れたなら、いいのですが。
そう言って、極卒は部屋を出た。


「…まさか、現実…?」


ユーリはまさかと思いながら、自分の腕を見た。
其処にはくっきりと手形が残っていた。
怖くなって、髪の色を確認してみた。
ほんの少し、うっすらとピンク色が入っていた。


「じっじゃあ…あれも……?!」


ユーリは、恐ろしくなって思わず絶叫した。

























































「ユーリ!ユーリ!!」

「うう…う…」

「早く起きろよリーダー。」

「はっ?!」


ガバッとユーリはソファーから身体を起こした。
いつの間にか眠っていた様だ。


「ここは…?」

「何寝ぼけてるッスか!もう収録が始まるッスよ!」

「キキキ…しかも今日はあのミラ4とだってリーダー言ってじゃん。」

「ミラ4…?」


ユーリは急いで起きて、スタジオへ向かう。
まさかと思いつつ。


願わくば



あの夢と同じにならぬように…!!!





THE END


きっと神が時間を戻してくれたんだと思う。
あの夢?どうりだと極卒もダメージ食らっちゃったからね!

最後はこんなはずじゃなかったんだけどな…。








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